ブルターニュひとり旅

8/13〜14

海から遠いところで生まれ育ったので、海の見える街には憧れがある。千葉出身の人にそう言うと「海のすぐ近くに住むと洗濯物がパリパリになるよ」と言われたから、ときどき逃避しに行く位がちょうど良いのかもしれない。そんな訳で、連休を使ってフランス北部のブルターニュ地方に行ってきた。本当はニースやマルセイユなど南の方に行こうかと思ったけど、8月はバカンスの超ハイシーズンで電車のチケットもとても高かったので、パリから数時間のサンマロという小さな港町に行くことにした。

午前11時、モンパルナス駅でサンドイッチを買ってTERという快速列車に乗る。パリを出て少しすると建物が見えなくなって、田園風景がただひたすらに続く。ほんとうに何もない平野が果てしなく広がっていて、たまに牛とか羊が数頭の群れで草をもそもそ食べている。人の気配が感じられない広い空間はちょっと不思議だった。

15時ごろ、ホステルにチェックインするためにDol-de-Bretagneという駅で降りる。知らない田舎町。ブルターニュに行こうと決めてからサンマロ周辺のホテルを調べたらどこも高くて、日帰り旅行にしようかとも思ったが、少し離れたこの駅に「EDD HOSTEL」という一泊35ユーロの宿があった。ホステルには日本でも何回か泊まったことがあって、どこも狭かったり暗かったり良い思い出がないので正直あまり期待していなかったけれど、このEDD HOSTELはすごくいいところだった。

天気が良くて暖かかったのでセーターから半袖のシャツに着替えた。テラスのハンモックでゆっくりした後、電車に乗って目的のサンマロに向かう。サンマロは城壁に囲まれた古い町で、かつてはフランス国王の公認で海賊のような人たちが活躍していたらしい。城壁の上に座って海をぼんやり眺めて、旧市街を歩いた。日本のごちゃっとした感じも好きだけど、ヨーロッパの石造りの町並みはパッと見た時に調和が取れていてすごくきれい。小さな町なので、2時間で十分見て回れた。

塩バターキャラメルジェラート
甘くてほんのりしょっぱくて美味しかった



孤独の鳥



 

20時くらいにサンマロを出て宿に戻った。ホステルの部屋に入るとちょうど同部屋の男子2人と女子2人がどこから来たの?とか話してて、一瞬あたしも会話に入ろうかと思ったけどボンジュールと挨拶してから何も言葉が出てこなくて気まずかった。近くのレストランに行こうと思って少し歩いたけど思ったより遠かったので諦めてホステルに引き返し、フロントでレトルト食品を買った。1階の共用テラスではさっきの男女グループが持ち寄りパーティーをしていて、いたたまれなく隅のほうで1人ごはんを食べていたら、スタッフの方が「ボードゲームしませんか?」と話しかけてくれた。私の他にも台湾人のお姉さんとフランス人と韓国人のカップルが来て、4人でスタッフさんがおすすめしてくれたBlokusというボードゲームをして遊んだ。シンプルな陣取りゲームなんだけど楽しかった。そっか、初対面の人と仲良くなるにはこういうシンプルなボードゲームが役に立つのか〜と勉強になった。4回戦目が終わって別のゲームをしようということになって、ゲームオブスローンズのモノポリーをした。ゲームオブスローンズもモノポリーも全然知らなくて一つ一つルールを教えてもらいながら遊んだ。さっきのスタッフさんは「このゲームは資本主義的だから好きじゃない」と言っていて、それがフランスぽくて面白かった。

資本主義を学んだ



気がついたら1時前で、眠くなったので部屋に戻った。軽くベッドの上を片付けながらメイク道具を全て忘れてきたことに気づいたが、どうしようもないので寝た。

2日目、フロントに併設されているカフェに行くと昨晩一緒にゲームをした3人がいて、一緒に朝ごはんのクレープを食べた。そしてなんとカップルが車に乗せてくれることになり、カンカルという牡蠣の養殖で有名な町に行った。彼氏はフランス人で薬剤師、彼女は韓国人の脳神経学者というかっこいいカップルで、ハイキングをしながら2人の馴れ初めや喧嘩の内容など色んなことを話してくれた。彼氏の方は最近「草食系男子」についての本を読んだらしく、最近の日本人は恋愛したがらないというのは本当なのか、という質問から始まり、日本のホストクラブやアイドル文化、パパ活などについて色々聞かれて話したが、説明しながらつくづく変な国だなと思った。どちらが良いかは置いておいて、日本とフランスでは人間関係や仕事との向き合い方がかなり違うように思う。最近は全く大学の勉強をしていないので偉そうなことは言えないけど、他人とどのように関係を築くべきなのかということに興味があるので、卒論もそんな感じにできたらなーとか考えた。

それから市場で牡蠣を1人1ダースずつ食べて、シードルを飲んで、サンマロまで送ってもらった。帰りはバス。夜でもまだ明るい空を見ながらぼんやりしていたらいつの間にかパリに着いた。良い旅だったと思う。